稽古場では早速次回公演(9月!観劇のご予定をぜひお願いします!!)『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』の稽古が始まりました。楽団連続出場が続く(6月、8月、そして9月!)遠藤洋平さんも3度目となる堺くん役に今までにない情熱を傾けています。
その稽古の模様も随時これからお知らせします。
まだ2回の読み稽古ですが、既にグルーヴが産まれる自由な現場になっています。ご期待ください!
さて、もう少しだけ前回公演の話題を。
今回のワンダー☆ランドの再演において、いつもと違った点が一つある。すごく些細なことなのだけど、気づいた人はどれくらいいただろう。それはパンフレットについて。
出演者本人の筆による登場人物の似顔絵を用いた人物相関図がそこにはドドドと広がっていました。
すごく好評なページでした。見開きに渡る(なんせ50役!)出演者それぞれの絵心を堪能していただいたり、温水元さんの上手すぎるイラストが全部で何個あるか数えたり、いろんな楽しみ方をしてもらえた様です。
さてそのパンフレット、今までだと弦巻の「ごあいさつ」が掲載されてました。掲載されてない場合は、別紙に印刷されたものが挟まっていたはずです。
しかし、今回は掲載も、添付もされてませんでした。「ごあいさつ」そのものがなかった訳です。
ごくごく数人にですが、「ないんですね。」と言われました。
ちょっとだけ、書けば良かったなと反省しました。
理由の一つは、単に間に合わなかったこと。
劇場入りしてから合間に書こうとも思ったのですが、それができませんでした。
もう一つの理由、これがむしろ大きな理由なのですが、
ワンダー☆ランドにはそれが必要ないような気がしていたからです。
僕はどちらかというと自作について解説したがりなのですが(そしてそれの何が良くないのか全然理解できない)、今作はその気が起きませんでした。
作品が全て語っている、とも言えます。
だから作品として優秀だ、とか、解説したくなる作品が欠落があるという意味では全くありません。
ただ、その気にならない、と言うだけです。観てもらうだけでいい。そんな気持ちでした。
今まで続けてたんだから、と言う気持ちもありましたが、それよりこの「観てもらうだけでいい」と言う気分が勝りました。
もう一つ、これは小さな理由ですが、
16年前の初演時に書いた「ごあいさつ」、これが全てだと感じていたからです。
16年たってもこれに付け足す言葉は一つもありませんでした。今回も全く同じ気持ちで製作され、本番に臨みました。そして、当時は「これは言っておきたい」と思ったこの言葉たちは今回の舞台では血肉となり、作品に脈々と流れていました。
なので、もうこの言葉を掲載したり、添付したりする必要はない。そう感じてました。
それがこの16年の、演出としての自分の成長なのかもしれません。
その16年前の「ごあいさつ」をここに掲載します。
一部削ったり、今回のメンバーに合わせて修正して、2019年版の言葉として。
今回の上演台本もそうでしたが、ほぼ16年前のままの文章です。
もし、作者の(弦巻の)そうした言葉を読みたいと思ってくれているワンダー☆ランドを観てくれた方に届くと良いのですが。
ごあいさつ
ささやかな物語を書こうと思った。ささやかで、みみっちくて、安っぽい物語を。
いつもお前の作品は長い、長いと言われるので、コンパクトでスッキリした、お茶菓子のような物語を。ずっと前から僕にはこの「ワンダー☆ランド」構想はあって、そのイメージの実現のために沢山の方に出演のお願いをした。そして、本当に幸いにも、この23人の役者が揃った。この23人に相応しい、愛に溢れた作品を作りたかった。そうしている内に案の定物語は膨らみ、日数も枚数もオーバーし、最終的にノート3冊に達し、登場人物は50人にもなった。そして、愛するキャストたちの場面をカットしてゆく作業はそれはそれは心苦しかった。
僕はすごく悲観的な人間だ。けれど、僕は自分の書き上げた物語を誇りに思ってる。この安っぽく、下らない、ささやかで馬鹿馬鹿しい物語を。その確信は、じたばたと転げ回る役者達を見る毎に深まっていった。正直に告白しよう。僕は楽しかった。「ワンダー☆ランド」は既にそこにあった。だから、僕が言うべきことは何もない。「どうか楽しんで下さい。」それだけだ。
最後に、この作品は一人の知人に捧げられる。
彼女は母親になろうとしている。
この物語を、彼女と、やがて産まれてくる新しい命に捧げる。
この愛を込めたロックンロールを。神無き祝福を。
人生は祭りだ。一緒に踊ろう。どうか、楽しんで下さい。
作・演出 弦巻啓太