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弦巻啓太

さあ、話し合おう。


少しずつ、稽古が進んでいます「わたしたちの街の『ジュリアス・シーザー』」。弦巻が不在の間も読み稽古やスタッフごとの話し合いが持たれ、作品が徐々に形になってきました。

現在幕ごとの通し時間を合計すると2時間15分くらい。これを1時間40分ほどでまとめたいと思ってます。

政治劇、陰謀劇でありますが何より討論劇でもあります。カットしなくては上演時間は縮まらないのですが、いつにも増してカットが難しい作品です。

説得、挑発、誘惑…言葉で他者を動かす戯曲なのですが、それにはやはり分量自体も意味を持ってきます。意味が伝わったから納得する、改心する、決断を改める、という次元で描かれてはなく、そこにはそれだけの言葉の量があって初めて他者が動いてるように読めるのです。分量=熱意と言っても良いかもしれません。なので、意味が最低限伝わるようにカット、とやってしまうと大切な何かを失ってしまう気がします。

さて、いろいろな面で我々と古代ローマの人間との違いを思い知る稽古の日々ですが、講座生全員であーでもないこーでもないと議論しながら取り組んでいます。この短期間で講座生全員がそのように変化したことに、驚きと手応えを感じています。

先日講座生のグループラインでも、初参加の受講生から質問があり、面白い議論が行われてました。

内容を一部伏せ字で紹介します。

Aさん

『お疲れ様です。演技について考える上で質問があります。

昨日、衣装や美術を「◯◯して〜」というコンセプトを聞いて迷っている事があります。

例えば政治家達が「記者」のような立場だった場合、

詩人はYouTuberとかブロガーであったりするかな?と思いました。それで、詩人のシナが人違いで殺されてしまうところは、政権に炎上発言したYouTuberが生中継中にリンチに合う、みたいな場面に思えたりもしたんです。

ただ、そうやって置き換えで演技を考えたら、シーザーの物語から、今の社会風刺みたいになって…なんだか自分の考え方が混乱しているんですが、どうでしょう?

役を作るって、どういう風に考えるのが良いんでしょうか?現代に似てるなあって思う部分を探すのか、歴史に合わせて想像して役を作るのか…?』

Bくん

『こんばんは。この場で議論するのも何かと思いますけれども、まあ、それは一旦置いておくとして、この場合、シナがYouTuberに置き換えられるとイメージしたら、そのようなイメージで、役を考えてみるのもアリだとは思います。その人の身なり、性格、行動原理的なもの(哲学とか宗教だとか)を考える上では、広がりが持てる気がします。

ただ、役を考える上で、もっと大事なのは、その人物のこの物語における役割を理解することだと思います。詩人のシナなら、1シーンのみ出てきますが、彼の関わるエピソードは、この物語を語る上でどういうピースなのか、というところを、"ある意味正しく"読み取るのが大事だと思います。

そうして、その読み取ったものを、いざ舞台の上で表現に起こしていく時に、どのような情報を身体や声に乗せていくか、ということを考えるのが必要だと思います。

その時に、台本の外側にある情報(直接書かれていない、台本を読んでも知ることができない情報)が、補助的に役立ってくるのかな、と、僕は思ってます。今回なら、その人物の描かれていない史実部分や、ローマの辿ってきたそれまでの歴史などだと思います。

社会風刺のように映ったというのは、この大昔に書かれた戯曲が、今の世界にも底通するようなテーマやトピックを持っているということだと思います。それだけ力のある戯曲であるというのとでもあると思います。

疑問に幾分でも答えられてるでしょうか、、?』

Aさん

『Bくん、真摯に答えていただき、嬉しいです。ありがとうございます。

初心者ながらも、せっかく皆さんと出会えて勉強させていただけるのなら、納得しながらやっていきたいと思っています。ぜひ皆さんの考え方を教えてください。よろしくお願いします。』

Cさん

『あのー、とても不肖なことで恐縮なんですが、僕の個人サイトで、僕なりに調べて解釈した当時のローマの背景とシーザーについて、お客様向けに紹介した記事を載せています。

「酔いどれ天使 お芝居」で検索したら割と上のほうに出てくると思います。

Aさんの答えにはまるでなっていませんが、大切なことは「考える」ことで、発信する役割を担う僕らがそれをすることはとても重要で、ある意味責任だと思います。

絶対的な正解があるわけでもないですし、各々が各々で考察し、それを持ち寄り、ぶつけ合いながら接点を探していくことが稽古の本質だとも思います。

演出さんに正解を求めるのではなく、このトークに提示したことは有意義なことだと僕は受け止めました。

なので、来月43歳になるおじさんですが、今日も昔の映画を見ながら考え、勉強しているところでした。参考になるかは分かりませんが、恥を偲んで。

それぞれが企んだこと(言葉は悪いけど)を、稽古場でぶつけ合えることを楽しみにしてます。』

こんな会話が行われてました。

自己満足ながら、すごく良い現場だなと思います。

講座には先日大阪からお越しになっていたボラ☆ボラの前田さん、皆川さんが遊びに来てくれて、この機を逃すまいとワークショップをお願いしました。発見の多いワークショップで、講座生も新鮮に体を動かし、楽しんでいました。前田さん、皆川さん、どうもありがとうございました!!

ジュリアス・シーザーは先日配役が発表されました。

陰謀渦巻くローマにぜひ足を運んでください。

チケットご予約も受付中です!

先日稽古場に遊びに来た石川凜。

「わたしたちの街の『ジュリアス・シーザー』」には不参加ですが、2年前から演技講座に通って『コリオレイナス』にも『リチャード三世』にも『ハムレット』にも出演しました。ただいま演劇シーズンの『親の顔が見たい』と、教育文化会館で行われる『夏の夜の夢子ちゃん』に出演するため稽古真っ盛り。売れっ子!

そんな凜についに身長を抜かれて悔しがる楽団員相馬日奈。


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