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弦巻啓太

面白いことはできなくてもいい


講座の1学期発表公演が終了しました。

#28ナイトスイミングが終わって約ひと月。『サウンズ・オブ・サイレンシーズ』の稽古も始まりましたが、4月末から演技講座も2017年度がスタートしていました。今年度はこれまでの要望を踏まえて主に仕事が終わったあと参加しやすい社会人向けの『平日夜コース』主に中高生向けの『土曜昼コース』の2コースを開催。それぞれのコースが約3ヶ月稽古してきた計2作品を発表しました。

土曜日のコースは弦巻がかつて美唄の市民劇団WA!に書き下ろした『火星から来た女の子』を。

火曜日のコースは高校演劇界の名作、島元要さんの『出停記念日』を上演しました。

本番は全4公演行われました。土日に2ステージずつ、さらに集まって毎回1度通し稽古をしていたので、どちらのメンバーも1日3公演行っていたことになります。3回本番をこなす集中力、お客さんの前で演じる緊張、初めて体感することばかりで、疲労が自分に与える影響含めて得るものの多い公演になったと思います。

3学期の劇場公演『舞台に立つ』を除けば、かつてない多くのお客様が狭い弦巻楽団の稽古場に集まってくれました。大幅な増席をした回も。ありがとうございます。

どちらのチームも失敗もありましたが、全員しっかりと演技してくれました。なので、バラツキはあれどどの回も物語の躍動や人間同士のぶつかり合いにハッとする瞬間がありました。初舞台の人間も、経験者も同じ土俵の上で演技が出来てました。

個人的には、昨年からこの講座を続けてくれているメンバーの成長が嬉しかった。コツコツ続けることが何より大切なことを改めて教えられます。

ある種古典的オーソドックスなコメディ『火星から来た女の子』と、女子高生の極めて表層的な(それゆえ切実な)日常を描いた『出停記念日』。タイプの全く違う2作品を受講生も直前のリハで初めて目にして、驚いていました。お互い相手の作品をやってみたいと思ったみたいです。

『火星から来た女の子』(土曜日チーム)は、登場人物と受講生の個性がよくはまり、書き換えなしに作品にできました。女子高生ミクを演じた石川凜を終演後初めて男の子(中学生)だと知って驚く方も多かったです。

『出停記念日』(火曜日チーム)は受講生がたまたま女性だけになったので選択した脚本です。弦巻が10年以上前、指導していた養成所で1度稽古したことがあるだけの、でもいつか取り組みたいと考えていた念願の作品でした。今回は8人の出演者が次々役を入れ替えていく演出でしたが、元々は登場人物5人のオーソドックスな日常劇です。

演技講座(しかもこれは『演劇研究講座』の中の一つ、と劇団では位置付けています)なんて固い名前でやっていることには理由があります。「初心者から参加できる」「中高生から大人まで」と言う特色から言えば、もっと柔らかい名前にしたほうが良いかもしれません。

これには「演技をしてみたい」と思っている人に集まって欲しいと言う願いが込められてます。「演技をしてみたい」。では「演技」とは何か。

いろいろな考え方があります。

弦巻楽団にも考え方があります。それは関係性を意識するということです。

関係性の中で生まれるもの。それが何を引き起こし、新しく何を生み出すか、そこに目的を持つこと。それを講座の中では考えます。

ときどき、「どうしたら面白いことができる人になりますか?」とワークショップなどで質問が来たりします。僕の答えは「その必要はないし、そうなろうと思わないこと」です。

ときどき、こちらの「ときどき」はさっきより多い「ときどき」、ワークショップの中で『面白いことをしよう』としている参加者を発見します。目立ちたいとか余計な欲望が根底にあるのなら簡単なのですが、そうすることを善として疑っていない、真面目な方への説明はかえって難しいことがあります。まずは役同士の関係性であったり、場面の意味や状況だったり、世界観から考えよう、と説明していきます。

そうすれば、必ず面白くなるから。舞台が、全員が。

そんな風に弦巻楽団の舞台づくりは進みます。

講座も公演も本質に違いはありません。

『面白いことができる人』ももちろん好きです。

でも、場合にもよりますが、それを参加者に求めることはまずありません。

僕がそう思うのは「面白い人」が舞台に上がれるなら、「面白くない人」は舞台に上がれないのか、と考えるからです。そもそも「面白くない人」ってなんだ。

だったら、演劇の力なんていらないじゃないか。

「面白い人」自体で成立するなら、物語も、役柄も関係性もいらないじゃないか。

そうした、いつのまにか「面白くない人」が発生する「面白い」のあり方に疑問が湧くのです。

それは劇団としての主義なら理解できます。

しかし、それは「誰でも参加できます」ではない。

(弦巻楽団の講座も、厳密に言えば「誰でも」ではありません。過去に断ったケースもあります。それは一緒に作業するメンバーや劇団員に対しあまりに尊敬がなかった場合です。)

『演技はしたいけど、面白いことは出来ない』

『面白いことができない自分は舞台に立てない』

そう考えてる人は少なくないと感じてます。

そうした人でも参加できる、むしろ歓迎する場所でありたいと考えて、『講座』という名前を掲げました。そして、まる4年続いてます。いま5年目に入りました。

これまでの受講生達も、あちこちで活躍しています。うれしい限りです。

そして、弦巻楽団の過去の活動を観てくれてた方にはお分かりのように、

その活動の中で、「初舞台」や「演劇経験のない」人間が経験者と同じように輝くことが幾度もありました。

発表会には過去の講座生も観に来てくれました。

ピンチヒッターで1日だけ出演してもらったクラアク芸術堂の田邊さんも、2年前受講生で一緒に作品づくりをしてました。今回、彼女の活躍に本当に救われました。当時一緒に受講していた現在劇団員の日奈も田邊さんの存在感に驚いてました。

さて、そんな講座の2学期の募集が始まってます。

今回はちょっと変則的なスケジュールです。なぜならこの講座生達と弦巻楽団として大規模な劇場公演に臨むからです。題材は『リチャード三世』です。これまで3学期の『舞台に立つ』で取り組んできたシェイクスピアにこの2学期も立ち向かいます。

それでも、弦巻楽団の講座の趣旨は変わりません。

中学生以上であれば、どなたでも参加できます。

年齢、経験不問です。

演劇に触れてみたい方、部活とは別の場所で演劇に取り組みたい中高生の方、演技に悩んでいる方、ぜひぜひご参加下さい。特に中高生の方は秋に大会が多いのですが、相談にも乗りますのでぜひお気軽にご連絡ください。締め切りは今月の28日です。

前回の『舞台に立つ』で上演された『コリオレイナス』の動画を貼り付けておきます。

こんな舞台を受講生全員で試行錯誤しながら作っています。

ご応募お待ちしております。

○指導講師  

弦巻啓太

(弦巻楽団代表 札幌座ディレクター 若手演出家コンクール2014最優秀賞受賞)

○参加資格  

中学生以上で、下記の活動期間スケジュールを取れて、活動場所に問題なく通える方。

○活動日程 

(各日 19時〜22時に行います。 ※中学生は21時まで。)

9月   

1日(金)、2日(土)、3日(日)、

29日(金)、30日(土)

10月 

13日(金)、14日(土)、15日(日)、

27日(金)、28日(土)、29日(日)

11月  

3日(金)、4日(土)、5日(日)、

17日(金)、18日(土)、19日(日)

*ここまでの活動場所

弦巻楽団稽古場  あけぼのアート&コミュニティセンター

劇場作業

11月 

20日(月)、21日(火)、22日(水)

発表公演(本番)

11月 

23日(祝)、24日(金)、25日(土)、26日(日)

*この期間の活動場所

サンピアザ劇場  

(参加したい、興味があるけど大会や本番が日程とかぶっていて駄目なんじゃ…と悩んだり迷ったりしている中学校や高校の演劇部で活動中の方は、お気軽にお問い合わせ先にご相談下さい。)

○参加費  

10000円

○参加申し込み

件名を『秋の『舞台に立つ』参加希望』とし、お名前、年齢、ご職業、住所、電話番号を明記の上、弦巻楽団宛にメールでお申し込み下さい。

○申し込み、お問い合わせ先

tsurumakigakudan@yahoo.co.jp

○締め切り   

8月28日(月)

○主催   

一般社団法人 劇団弦巻楽団


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